ウルトラジャンプ2021年11月号に掲載された魔老紳士ビーティー『そばかすの不気味老害事件』のあらすじと感想を、荒木信者歴35年の管理人やまぴーがネタバレありで語らせていただきます。
今回はジョジョネタが盛りだくさんのため、できるだけ元ネタを紹介させていただきます。
※これまでの荒木作品全般のネタバレに触れていますのでご注意ください。
魔老紳士ビーティーのあらすじと元ネタ紹介
我々はこの老人を知っている
表紙は1984年に発売されたコミックと同じ構図。市松模様の矢印はビーティーのシンボル的デザインです。
昔のコミックは現在絶版でプレミアがついてるみたい。
ちなみに右はやまぴーの私物。本編のあとに、なつかしの読者感想コーナーがあります。
魔老紳士の肩に乗っているのは、バオー来訪者に登場する生物兵器サニー・ステファン・ノッツォ。カワイイ顔をしてますが、主食がゴキブリというテラフォーマーズなヤツです。
アオリは
奇跡のタッグ×B.T.!!=老年ピカレスクロマン
魔老紳士ビーティーは、原作がジョジョ小説『JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN』でもおなじみの西尾維新先生、作画が『約束のネバーランド』の出水ぽすか先生という2000万パワーズなタッグなのです。
一巻で打ち切られた昭和の漫画を、令和になって業界の売れっ子ふたりがスピンオフで描くなんて、時代の流れはわかりませんね。ちなみに、「ピカレスクロマン」というのは、悪者が主人公の小説のこと。
ページをめくると、車を運転する老紳士となったビーティーの姿が。
アオリは
☆妖しく華麗な戦慄!!
我々はこの老人を知っている!
いや!
このまなざしとこの耳を撫でるクセを知っている!
いきなり第二部のスピードワゴン登場をパロったセリフが登場します。
ビーティーが運転する車の中には、ジョジョで登場した小道具が満載です。やまぴーが確認できたものをピックアップすると以下のとおり。
- 石仮面
- アメリカンクラッカー
- シーザーのバンダナ
- エイジャの赤石
- デーボの人形
- スタンドの矢
- ポラロイドカメラ
- ストレイ・キャット(猫草)
- てんとう虫のブローチ
- ココ・ジャンボ(鍵亀)
- ドッピオの電話(犬人形)
- ジャイロの鉄球
- ロカカカ
助手席に座っている腹話術の人形は、ジョジョではなくビーティーの私物です。人形の中には録音機(スマホではなくカセットテープ)が内臓されています。
ポラロイドカメラは第三部のジョセフのだと思います(写真のオヤジは型が違う)が、今回だと『約束のネバーランド』のほうが浮かびます。レイが耳の発信機を壊すために、ママからご褒美でもらったやつです。
と、開始ページから、恐ろしいまでにジョジョファンの心をつかんでくれます。
場面は変わり、机の前で椅子に座り話しはじめるビーティーの親友こと麦刈公一(むぎかりこういち)。「なんと申しましょうか」は公一くんの定番フレーズです。
「事件を語るのは公一くん」というのが初代からのスタイル。もともとは推理小説『シャーロック・ホームズ』で、事件の概要をシャーロックではなく助手のワトソンが語るところから来ています。
もちろん、公一くんのキャラクター像は第四部の康一くんに受け継がれていきます。ビーティー&公一くんのコンビも、第四部で露伴&康一くんに継承されるのです。
昔のスタイル同様に事件の導入を語る公一くんですが、後ろの家具には「差し押さえ」の赤紙が。公一くんは家具を押収され、さらには家屋を追い出されてしまいます。
しかし、家屋に巻かれた立入禁止テープが一ヶ所だけ『立禁止』になってます。第四部で初登場の億泰が削り取ったパロディじゃないですか。
こんな細かい部分にまでジョジョネタを差し込んでくるとは。「おいおい、オレじゃなきゃ気づかないぜ?」とニヤケてる信者は、すでに西尾先生の術中です。
だからおれが裁く
傷心の公一くんの元に、クラシックカーを暴走させながらビーティーが登場。車に乗った公一くんは、家屋財産を悪徳業者にだまし取られた敬意を話します。悪徳業者から杜王町にある別荘を買うことを勧められ、自宅を担保にしてしまったとのことです。
車内で公一くんの話を聞きながら煙草をふかすビーティー。アンチ肉体派なチョイ悪ジジイの姿が、令和の時代には新鮮に見えます。車の運転は、第五部のズッケェロを彷彿させる暴走っぷり。
会話の中で、公一くんが今から37年前の35歳のときに、ビーティーをモデルにした小説「魔少年ビーティー」を出版していたことも分かります。しかも表紙は岸辺露伴の描き下ろしです。
今回ジョジョキャラとして唯一具体名が挙がった岸辺露伴。今後ビーティーの世界でジジイ露伴が登場するかと思うとワクワクします。なんなら、ワンピースでおなじみの「なにかあった未来」の岸辺露伴でもいいですよ。
漫画は一切描いてないくせに「漫画家」の肩書でテレビに登場して、ピンクダークの版権はCRパチンコに売り払った露伴です。
ビーティーと公一くんは購入した杜王町の別荘へ到着。しかし、目の前にあるのは内見のときに見た新築物件とは似ても似つかない、ボロボロの屋敷幽霊でした。
「幽霊屋敷」ではありません。「屋敷幽霊」です。屋敷そのものが幽霊なのです。荒木先生は屋敷幽霊がお気に入りらしく、短編の「デッドマンズQ」に加え、第六部のエンポリオのスタンドとしても登場させています。
これは「曳家」という建物をそのまま移動させる方法で、家を入れ替えたのだと言うビーティー。「家と家との等価交換」だとロカカカっぽく説明しますが、新築とボロ家じゃ等価とは言えません。
余談ですが、やまぴーは「家を動かす」と聞くと、西条真二先生の大工マンガ『大棟梁』のみんなで一軒家を持ち上げるシーンを思い出します。
内見用の空き家は、「ボヨヨン岬」のある別荘地のものだと推理するビーティー。山岸由花子でおなじみの「ボヨヨン岬」です。よく見ると、ボロ家の外観も康一くんが監禁された別荘に似ています。
公一くんは警察に相談するも契約自体は合法のため動いてもらえません。しかし、そんな状況にビーティーは第五部よろしく「ベネ(良し)!」と言います。
警察が動けないのなら
ぼく達が動いいということなんだから!
食らわせてやらねばならん!
しかるべき報いを!
セリフとは裏腹に、自撮り棒片手に公一くんと記念撮影をするビーティー。明らかに状況を楽しんでいる様子です。ビーティーのようなタイプって、自分が暴れるために親友を疑似餌にしている気がします。
お仕置きの時間だよベイビー
舞台は変わってプレハブ内の事務所。ウシジマくんやギャングースよろしく、詐欺の営業電話を下っ端どもが展開中。固定電話まで引いて本腰入れてる感じです。
この間抜けさでどうやって長生きしてるんだ
こいつらは?
ボケ防止のために人生に
刺激を与えてあげなくちゃ☆
下っ端のセリフに西尾イズムを感じます。
そんな下っ端のひとりが、YOUTUBEらしきサイトで公一くんの配信動画を発見。なんでもボロ屋の別荘から、年代物の宝石がゴロゴロ見つかったそうなのです。公一くんを騙した下っ端は、驚いて公一くんのもとに車を走らせます。
もちろん、これはウソ。ビーティーが詐欺師たちを呼び戻すために張った罠です。ダマスカス絨毯にロココスタイルの箪笥と、『ゴージャス・アイリン』の家と同様のリノベを行っていきます。
なお、ここで唐突にビーティーの妻についての説明がありますが、今回は登場しないようです。イギリス在住で「あの女」と呼ばれていることから、元ネタはシャーロック・ホームズに登場するアイリーン・アドラーでしょう。
おや?先ほどインテリアに飾っていた装飾品の元ネタと、「あの女」の元ネタの名前が一緒ですね。ひょっとしてビーティーの妻というのは…
『追い払うことができない』ときは
『追わせるのが良い』な
第八部でお馴染みのセリフを口にするビーティー。そういえば西尾先生は小説『OVER HEAVEN』でも第三部ディオに第七部テイストを入れまくってました。窓際に飾られるフィギアは、初期短編『バージニアによろしく』のクライドです。
今見ると、ソフト&ウェットに似てますね。
ちなみに、見つかった宝石というのは、かつてビーティーたちが『恐竜化石泥棒事件』で盗んだもの。デザインも当時と一緒なのがマニア心をくすぐります。
また、薬の時間だとロンドンから仕入れた東洋の秘薬を飲むビーティー。本人は183歳まで生きるつもりだと、これまたマニアが喜ぶセリフを言ってくれます。
不老不死のディオでさえ、183歳までは生きられなかったというのに。
宝石を巻き上げるべく最新式のAIカーで別荘に戻ってきた詐欺師たちに、大物ラッパーのような格好でノリノリの演技をする公一くん。「25歳年下の美人モデル」などと、第三部の上院議員を彷彿させるパワーワードも登場です。
執事のフリをして紅茶を持ってくるビーティー。カップはもちろん、第四部でしのぶがお気に入りだったウェッジウッドのハンティングシーンです。
ボスに制裁を受けた下っ端たちは、初期ビーティーに登場する二の森先輩よろしく「ムカドタマー」状態で、紅茶をボインゴ本のように「ゴク!」と飲みます。
ちなみに、受け皿を持たずにティーカップの取っ手に指を突っ込むという完全なマナー違反をしています。
身分が違う『君は消される』
紅茶を飲んだ詐欺師の男が、いきなり倒れ込み意識を失います。なぜなら、紅茶のひとつにフグ毒のテトロドトキシンが混入されていた……というのはウソで、睡眠導入剤が入っていたためです。
ビーティーのおばあちゃんはフグが大好物というくだりは、初期ビーティーにも登場します。初期では睡眠導入剤ではなく抗酒剤ですが。
なお、たかだか睡眠導入剤でいきなり倒れるか?と疑問に思えるかもしれませんが、きっと激務で寝不足だったのです。裏稼業も人手不足なんでしょう。
残った女の詐欺師を脅すように、なんとなくナイフを出すビーティー。これは読切版にあったビーティーのしぐさです。令和版では、ナイフではなく折れた刀身を持ってますが、間違いなく第三部のアヌビス神のパロディーでしょう。
パニックで騒ぎ出す女詐欺師に、ビーティーが昔からの決めゼリフを放ちます。
ひとつだけはっきり言っておく
お前らとぼくは精神的に身分が違うのだ
ぼくは精神的騎士(サー)に位置する!
従って無礼な口の利き方は許さん!
貴族から騎士に変更されてますが、「精神的に身分が違う」はかなりの名言ではないでしょうか。要は「社会的身分より本人の気持ちが大事」ってことです。令和キッズも親ガチャを嘆く前に、これぐらいのたくましさを身につけるべきです。
ビーティーの横では、第三部の老ジョセフよろしく「OH MY GOD!」とつぶやく公一くん。
場面は変わり詐欺師たちのプレハブ事務所。公一くんの昔の著作を読んでいた詐欺グループのボスが、いきなり事務所から撤収すると言い出します。部下たちが戸惑いながらも撤収作業を始めるなか、ビーティーがディオを乗せた上院議員よろしくクラシックカーで事務所に激突します。
やあ!これは失敬…
アクセルとブレーキを踏み間違えてね
老人のセリフとしては時事的にヤバいネタをブチ込みながらビーティーが現場に登場。それを第三部のディオのように拍手で迎える詐欺団のボス。
やはりクルマをぶつけに来たか…
六十年前は確か救急車だったが
ボスの正体は、少年時代に公一くんの家を乗っ取ろうとしたそばかすの少年だったのです。確かに数ページ前に戻ると、机にコーラのペットボトルが置いてあります。彼のコーラの早飲みは、渡辺正行もビックリなスピードです。
というか、そもそもタイトルが「そばかすの不気味老害」でした。会社名の「アウトロー・ガイズ」にも「老害」が隠されているのは偶然でしょうか。いや、これは荒木先生の幻の初期作品「アウトローマン」が元ネタでしょう。
「アウトローマン」ってたしか編集部が原稿失くしたんですよね。新人漫画家の扱いがよくわかるエピソードです。ガッシュの雷句先生は、原稿紛失を皮切りに小学館と大喧嘩してましたね。
それにしても、吉良よりはるか前にそばかすが救急車アタックを食らっていたことに驚きです。
「脳軟化人生」と煽るそばかす老害に「大物ぶるなよ波紋戦士」と返答するビーティー。もはやパロディというかジョジョのセリフそのものです。
第三部のディオと承太郎のように対峙するビーティーとそばかす老害。そばかす少年の顔が、当時より「チャイルドプレイ」のチャッキーっぽくなってます。
魔老紳士は断らない
公一くんの家を取り返したいならば、とそばかす老害はビーティーに賭けを提案します。挑発に乗らないようビーティーに注意する公一くんですが、魔老紳士の答えはひとつ。
だが承る!
有名すぎる露伴のセリフパロで返答するビーティー。六十年経ってもいまだに賭ケグルイです。
老害はダービー兄のように「グッド!」と応えると、金庫から小銭の詰まった集金袋を取り出します。小銭をテーブルにばら撒き「表が多いか、裏が多いか」を当てるギャンブルを提案します。
大量の小銭は、駄菓子屋のばあさんを騙して巻き上げてたものとのこと。「収穫」に「ハーヴェスト」とルビが振られています。老害の笑い方も「しししし」と重ちーそのものです。
第四部で登場し、冨樫義博先生にも「欲しいスタンド」と言われたハーヴェスト。しかし、キャッシュレス化が進んだ現在も活躍できているのか、やまぴーは少々心配です。
ビーティーの提案により、コインの「表と裏の枚数差」ではなく「表と裏の枚数差が偶数か奇数か」で勝敗を決めることに決定。老害は偶数に賭けます。
ならばぼくは奇数に賭けるよ…
『偶然』ではなく『奇妙』に賭ける
ディーラーとしてコイントス役を命じられる公一くん。第四部で狩りに行く仗助のようにプレッシャーを感じます。
表(HEAD)か
裏(TAIL)か
奇(STARANGE)か
偶(ACCIDENT)か
魔(WICKEDNESS)か
不(EERINESS)か
OPEN THE GAME!
ゲームを始めよう!
ダービー兄と同じ掛け声でゲームスタート。ちなみに、「奇」が“BIZARRE”ではなく“STARANGE”になってます。
ゲーム開始前に手の内にコインを一枚パームしていたビーティー。「パーム」に注釈がないのは、西尾先生からの「ジョジョファンならパームくらい知ってるよな?」というメッセージでしょうか。
palm [名]手のひら [動]掌中に隠す
イカサマを見張ってろだろ?
この悪党め!
と、祖父を悪党呼ばわりする承太郎よろしく、親友を悪党呼ばわりする公一くん。しかし、すでに老害も一枚パームしており、ビーティーの動きに応じて仕掛ける気マンマンです。
ビーティーの動きを見て、自分もパームしたコインをテーブルに乗せる老害。これで枚数差は再び偶数に戻りました。
60年前の借りは返したぜ!
二人の友情は砕けない
勝ったッ!
第3部完!
指の形もちゃんとガンフィンガーで突き出す老害。しかし、テーブル上のコインの裏表の枚数差は奇数になっています。枚数の数え方が、第三部のダービー弟のYES/NO診断に似ています。
ビーティーのトリックが分からず取り乱す老害。そのまま杖から仕込み刀を抜き出してビーティーに「かくごっ」襲い掛かります。
そのとき、暴走してきた無人のAIカーがギャーンと老害にアタック。仕込み刀はビーティーを外れてゴツンとクラシックカーのタイヤに突き刺さります。
刀を出した老害が車にぶつかるシーン、そばかす少年時代のビーティーのときと擬音も構図もほぼ同じです。この展開はお見事。
AIカーは、切り落とされた吉良の左手よろしく走行履歴から元の場所に戻ってきたのです。そしてビーティーと公一くんがアジトを突き止めたのも、第八部のつるぎと康穂ちゃんのようにナビの履歴を調べたからです。
そのままAIカーで警察署に移送されるそばかす老害と詐欺グループ。警察署の交通安全標語が「見ているな!」「安心感を与えてやろう」とディオ様してます。ディオって警官向きかもしれません。
なお、コインギャンブルのトリックの正体は公一くんからのパームでした。合図なしでの仲間アシストは、ダービー弟戦でのジョセフが元ネタでしょう。第三者介入は、デビュー作「武装ポーカー」の頃から荒木先生の得意技です。
余談ですが、やまぴーが「戦力外が勝敗を決める」シーンで一番記憶に残っているのは、岩明均先生の『寄生獣』です。
礼を言うビーティーに対して、「きみの隣で六十年間きみを見て来た」と、序盤で家屋財産をだまし取られたとは思えないセリフを言う公一くん。
しばらく息子夫婦の家に厄介になろうとする公一くんに、「僕の館に来い」と誘うビーティー。「おばあちゃんもきっと喜ぶだろう」と、今回一番ビックリなことを平然と言ってのけます。
車がパンクしたため、歩いて町まで帰ろうとするビーティー。「あの頃のサマーキャンプみたいで」と、参加者全員がトラウマになったであろう思い出を楽しそうに語ります。
さらにビーティーは金庫から「慰謝料およびパンクの修理代」として札束を頂戴します。これは初代ビーティーの「おじさんX事件」と同じですね。今回のビーティーの袖のX模様もおじさん由来のXでしょうか。
徒歩を嫌がる公一くんに、ビーティーが今回一番の決めゼリフを一言。
白髪や甲羅が生えたとて
心はいつでも少年だぜ
歩き出す二人の背後には、影が夕日で大きく伸びています。なんともジュブナイルな光景です。
そばかす老害も「いつかまた会おう!」と、昔と同じセリフを丸コマ内で展開。敵役ながら憎めないヤツです。また60年後の再会を期待したいですね。
アオリは
☆幾星霜を経ても、二人の友情は砕けないー!!
さらに、「To Be Continued」の矢印まで。これは続編を期待していいってことですよね?
最後までワクワクさせてくれる作品でした。
魔老紳士ビーティーの感想と考察
魔老紳士ビーティーの良かった点
魔老紳士ビーティーの感想を一言で言わせてもらうと、「面白かった!」です。
連載中は色々と思うところがあったジョジョリオンですが、終わるとやはり寂しいもの。多くのジョジョファンと同じく、やまぴーもジョジョロスに突入。ジョジョ再開までウルジャンを買うこともないな、と思っていました。
実はウルジャン11月号も買うつもりはなかったのですが、店頭で表紙を見たら荒木先生関連がいろいろ載っていたので思わず購入。ビーティーを読んだら感想を書かずにはいられなくなり、書き始めたら一万字オーバーしてました。
ジョジョファンにとって嬉しいのは、やはりジョジョネタの数々。ちゃんとストリーを展開させながらも、ジョジョネタが山ほど入ってます。ベテラン主婦の野菜詰め放題ぐらいパンパンに入ってます。
メモ書きなどの細かいネタは、紹介しきれてないほどです。しかもジョジョのみならず、初代ビーティーやバオーなどこれまでの荒木作品が総出演。ジョジョロス中にいきなり読んだら鼻血が出そうな濃さでした。
ここまで盛るなら、もう荒木ネタ以外でも出せばいいのに。「出荷すんぞコラ」とか。
肝心のストーリー展開も、初代ビーティー同様にライトでサクサク進む感じがベネでした。
西尾先生ならもっとダークな展開もできたと思うんです。ビーティーも老害もきっと賭郎会員ですから、立会人を呼んで周りが「ハングマン!ハングマン!」とか言ってるような展開も。
しかし、山場の勝負はアッサリとしたコインの表裏ゲーム。読んだあとに小学生が友達同士でできる内容(イカサマ含め)というのが逆に良いです。初代同様に肉体バトルが皆無なところもいい。
読切として、完成された作品でした。
魔老紳士ビーティーの不満点
ここまで完成度の高いスピンオフ漫画ですから不満などありません。漫画としての完成度も、ぶっちゃけ第八部より全然……いや、なんでもないです。
ただ、初代からのファンとしてあえて言うならば、そばかす老害が公一くんの存在を知ったタイミングがちょっと変かな、と思いました。
老害にとって公一くんはかつて家を乗っ取ろうとした相手ですから、名前ぐらい覚えているはず。そして下っ端が昔の書籍までチェックしているんですから、ボスの老害が知らないというは考えづらいです。
公一くんのピンチにビーティーが駆けつけることを知っていた老害が、ビーティーに復讐するため、あえて公一くんを罠にハメる。そういう展開のほうが、やまぴー的にはしっくりくると思います。
さらに個人的なことですが、老害には家族で来て欲しかったです。やまぴーが小学生のころ「そばかすの不気味少年事件」を読んで怖かったのは、「子供が悪いことをしたら叱るはずの親が、一緒に悪いことをしてる」ことでした。当時はけっこうなショックでしたよ。
さらにさらに言うと、ビーティーならではの、本編とは関係ないトリックの登場と解説も欲しかったかな。唐突にセグウェイに乗ってる老ビーティーのカットとかも。
とはいえ、どれも不満とは言えないレベルです。
魔老紳士ビーティーについての評価
ジョジョファンからの評判は間違いなく上々な魔老紳士ビーティー。原作も作画も実力派ですから、元ネタを知らない人にも楽しめたと思います。
しかし、これが「魔少年ビーティーの後継作にふさわしいか?」と問われると、やまぴーの答えはズバリ「NO!」です。
だってコレ、万人ウケする面白さじゃないですか。原作も作画も大御所だし。ウルジャン表紙にデカデカと載っていることから、編集部の推しっぷりもわかります。
でも、それじゃあダメなんですよ。初期のビーティーを思い出してみてください。ポッと出の新人が、ジャンプにそぐわない漫画を描いて、編集部から総スカン食らって、一年以上塩漬けにされる、それがビーティーなんです。
編集から「漫画じゃなくてジャンプを描いてこいよ田舎者が」と言われ、読者からも「なんか気持ち悪い」とか「正々堂々戦え」とか言われたのがビーティーなんです。多分。
つまり、西尾先生とぽすか先生が組んで、ウルジャンが猛プッシュしてる時点でビーティーじゃあないんです。「ビーティーの続編として期待されている時点で、ビーティーではない」という奇妙なパラドックスなんです。
もっと読んだ人間が「ハァ?」となって、世間から疎まれるぐらいじゃないとビーティーとは言えません。
例えば今回のエピソードで、アクセルとブレーキを間違えたあとに「ぼくは上級国民に位置する!」とか言い出したら、間違いなく疎まれるでしょう。って、それじゃブラックすぎますね。
じゃあ、そばかす老害の孫が皇族の娘を騙して結婚詐欺を働く、というのはどうでしょうか。いや、もっとダメですね。もう止めておきます。
魔老紳士ビーティーの今後
多くのジョジョファンの心をわしづかみにした魔老紳士ビーティー。もはや続編は必須でしょう。西尾先生もぽすか先生も、「To Be Continued」を入れた以上は「責任から逃げるな」です。
まだおじさんXや西戸といったヴィランズも残ってますし、気になるビーティーの妻もまだ登場していません(たぶんゴージャスな彼女)。なにより、まだ存命なおばあちゃんの存在が気になります。
単行本発売のためにも、ぜひ続編を。
しかし、こうなるとビーティー以外の漫画も気になってきますね。
育朗もそろそろ眠りから目覚めてスミレの孫娘と冒険を再開させる頃でしょう。ヒロシとマット船長のソリッド・シチュエーション・ホラーもまだ完結していません。
ここまで荒木ファンのハートを熱くさせてくれるとは、ジョジョのスピンオフ前にあえてビーティーを持ってきた編集部の作戦はお見事。今後の荒木ユニバースの展開に期待したいです。
~おまけ~ 今月号は荒木飛呂彦祭り
ビーティー以外にも、ウルジャン11月号は荒木先生関連のネタが盛りだくさんでしたね。例えるなら、『本人不在の荒木飛呂彦祭り』です。以下、各項目をピックアップ。
・荒木飛呂彦漫画賞
開催の告知を見たときは、「ジョジョリオンの原稿チェックもできないのに何言ってんだ」と思ってましたが、優秀な作品が数多く集まったのなら結果オーライですね。
荒木先生が受賞作に「ルールにいまいち不明の所がある」とコメントされてたのは、「先生、それはブーメランです」って思いました。
受賞者の方が「ジョジョは人生の教科書」とコメントされててビックリ。若い方はワンピースとか鬼滅の刃とか無難な漫画を参考にされたほうが良いと思います。
でも「実はジョジョよく知らないんです。好きな漫画家は藤本タツキ先生です」とか言ってる応募者がいたら、ソイツこそ荒木イズムの後継者でしょう。
・小説「岸辺露伴は動かない」
北國ばらっど先生の新作『黄金のメロディ』と『原作者 岸辺露伴』の2編を収録。
『黄金のメロディ』はイマイチ。岸辺露伴である必要性をあまり感じませんでした。しかし、泉京香の再登場には「おっ」となりましたね。
『原作者 岸辺露伴』は反則です。そのテーマを選んだ時点で「勝ち」だと思います。しかも薬物ネタっておいおい。
どちらもNHKでドラマ化されることを視野に入れたストーリーだと思います。全然悪い意味じゃないです。実写化想定の露伴、小説ならではの露伴、漫画の露伴、いろんな露伴があっていいと思います。
・NHKドラマ「岸辺露伴は動かない」
前回が大好評につき、今年の年末も露伴ドラマが放送決定。一生露伴の服装が別バージョンになってる時点で、製作陣の熱を感じます。どのエピソードかは未発表ですが今から楽しみです。
露伴ドラマは今後も続けてほしいですね。ご長寿ドラマになってほしいです。露伴役も、金田一耕助みたいにいろんな役者さんが交代。「次回の岸辺露伴はシリーズ初の黒人俳優」なんてドキドキします。
・ジョジョのスピンオフ漫画
裏表紙に掲載。原作が『恥パ』の上遠野浩平先生、漫画が『ノー・ガンズ・ライフ』のカラスマタスク先生。
仗助のイラストとともに「これは彼のスタンドがクレイジーダイヤモンドと呼ばれる以前の物語。」のコメントが掲載されてます。これは第四部が舞台ってことでしょうか。
でも、以前のイラストではホルホースやペットショップも出ていたような。上遠野先生のことだから、きっと他の部とも連携するんだろうな、と勝手に考えてます。
と、荒木漫画情報がテンコ盛りだったウルジャン11月号。ジョジョが連載していないのにここまでやるとは。もう四半期に一度、荒木トリビュートな増刊号を出してはいかがでしょうか。ウルジャンにおける荒木先生の存在は、もはやチャンピオンにおける高橋ヒロシ先生、バンチにおける原哲夫先生みたいなものでしょう。
こうなったら、荒木先生には「集英社のスタン・リー」的存在になってもらいたいですね。で、露伴ドラマに毎回チョイ役で出演してもらいましょう。
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