ウルトラジャンプ2021年7月号に掲載されたジョジョリオン第108話『最期の厄災』のあらすじと感想を、ジョジョ歴30年の管理人やまぴーがネタバレありで語らせていただきます。
※これまでのジョジョ全般のネタバレにも触れていますのでご注意ください。
前回のあらすじを忘れた人は↓
ジョジョリオン108話のあらすじと感想
どっちの病理ショー
扉絵は、東方邸を背景に立つヒロイン、広瀬康穂(ひろせやすほ)。大きく開かれた足の間からは、破壊された東方邸が見えます。
アオリは
これは『呪い』を解く物語――
ジョジョリオンの第1話でも康穂ちゃんが口にする言葉。これまでのストーリーに紆余曲折はありましたが、ジョジョリオンという物語のテーマは一貫していた証でしょう。
余談ですが、第7部スティール・ボール・ランはジョニィが再び歩き出す『再生』の物語です。こちらもジョニィ初登場回と最終回でテーマが語られています。
ページをめくると、舞台は前回に引き続き東方邸。二本松の見える外壁から、厄災の落下物により破壊されたリビングへとコマが移ります。リビングを這いつくばりながら移動するのは、つるぎの母、東方密葉(ひがしかたみつば)。
密葉の向かおうとしているガレージでは、透龍(とおる)と東方花都(ひがしかたかあと)による最後の戦いが繰り広げられています。ガレージ横に立ち尽くす東方鳩(ひがしかたはと)と東方大弥(ひがしかただいや)。二人のそばには東方常敏(ひがしかたじょうびん)の遺体が。
アオリは
東方花都の攻撃…
それは―『つるぎ』!!
花都のスタンド、スペース・トラッキングによりカードから現れたのは先祖代々の呪いを背負ったつるぎでした。新ロカカカの果実を食べた透龍くんにつるぎが触れると、二人の身体で等価交換が始まります。涙を流しながら様子を見守る花都。
どっちへ…向かうのか?
…その「等価交換」…は…?
『あなたとつるぎ』
「病い」が向かうのは…
こちら側へなのか…?
等価交換の発動に苦しみながらも、透龍くんは新ロカカカを食べた自分の方が有利だと考えます。しかも透龍くんが食べたロカカカの果実は最後のひとつです。しかし、花都の視線の先を見ると、そこにはバラバラに分解されたロカカカの鉢が転がっています。
継き木した新ロカカカの「枝」は
スペース・トラッキングのカードとカードの間で
私がすり潰してトロトロの樹液とした
花都の持つカードの間からは、ロカカカの樹液が垂れています。その樹液はポタポタとつるぎの口の中へ。つるぎもロカカカを摂取していたのです。
「等価交換」!!
おまえが…この僕にこんな「攻撃する」なんて…
互いの尾を飲み込む蛇のように、等価交換は「食うか食われるか」の様相を呈してきました。
よくもこんな事をッ!
ただで済まされると思うのかァッ!!
透龍くんのスタンド、明負悟(あけふさとる)院長ことワンダー・オブ・Uが花都に襲い掛かります。これまでは「厄災」をブツけるだけでしたが、ついにスタンド自身が攻撃。しかも絞め技のチョークスリーパーです。
このシチュエーション、バキの「花山VSスペック戦」を思い出さずにはいられません。
断末魔の主張
しかし花山の握撃を待つまでもなく、等価交換のダメージによりワンダー・オブ・Uの頭部がドバゥッと破壊されます。それとは対照的に、つるぎの肌からはヒビ割れが消え、回復している様子です。
もはや勝てないとばかりに、花都に等価交換をやめろと言う透龍くん。新ロカカカの「枝」は、震災での壁の目の隆起と、吉良吉影の死と、スタンド能力とが偶然に重なり合って生まれたこの世の「理(ことわり)」であり、このままでは『地球上の生命の為の摂理』がなくなる、と矢継ぎ早に話します。
命乞いだけでなく、あわよくば新ロカカカも蘇らせようとする商魂たくましい透龍くん。しかもこれまでのジョジョリオンの要点をギュッとまとめて説明しています。
しかし、まとめ記事など不要とばかりに透龍くんの言葉をさえぎる花都。
つるぎの…この「病い」は…
あんたが全部持って行け
そしてこの「罪」は…
全て私が背負って行く
人を呪わば穴二つ。花都の覚悟あふれるセリフにシビれます。憧れます。花都じゃダメだと、今度は康穂ちゃんに助けを求める透龍くん。この往生際の悪さ、それでこそジョジョのラスボスです。嫌悪を通り越して「すげえなコイツ」と驚きの目で透龍くんを見る康穂ちゃん。
康穂ッ!
このクソ女をさっさと
止めやがれェェェェェエッ
ついに来た、ラスボス恒例の断末魔タイムです。最強と思われたラスボスが、最期は情けないセリフを叫びながら朽ち果てる。もはやジョジョの名物コーナーといわれる存在です。
やまぴー的に現在トップはディアボロです。
断末魔の叫びと共にバゴォと音を立てて砕け散る透龍くん。それと同時にパチリと目を覚ますつるぎ。すでにその身体にヒビ割れはありません。目を覚ました息子を見た密葉は、つるぎに駆け寄り両手で抱きしめます。
車のボンネットの上で粉々になり絶命していく透龍くん。ふと、一匹のスズメ蜂の姿が見えます。しかし、見間違いだったようで次の瞬間には何もありません。
そうか…思い出…
なのか…僕の……
#107で思い出について花都を挑発したあげく、透龍くん本人が最期に思い出すのはスズメ蜂だけ。落ちぶれたラスボスの最期として満点です。しかし、母親に抱かれるつるぎと、スズメ蜂が母親代わりな透龍くんの対比がちょっぴりカワイソーではあります。
希望、即ち頬!!
ママ… ああっ
そっ それはッ…!!
花都を見た大弥ちゃんが驚きの声を上げます。なぜなら、花都の右腹部には透龍くんが握っていたノコギリが深々と刺さっているのです。ノコギリを持った透龍くんの左手をカードで押さえていたため、攻撃の代償としてブツかってきたのでしょう。
どうでもいいですが、大弥ちゃんって弱視の設定だったような。あと、驚いた表情が楳図かずおテイストです。
腹部にノコギリを刺したまま、地面に崩れ落ちる花都。まぶたの中には、自分が愛した家族の姿が浮かんでいます。花都は厄災を承知で透龍くんを攻撃したのでしょう。「死を覚悟してやり遂げようとするヤツ」の姿は泣かせてくれます。第5部のプロシュート兄貴とか7部のブラックモアとか。
ジョジョ以外でも「うしおととら」の凶羅とか、「嘘喰い」の伽羅とか、「亜人」の戸崎とか、どいつもこいつもカッコいいです。
『ジョジョリオン』…―
これは―「呪い」を解く物語
扉絵のアオリを繰り返し、康穂ちゃんはジョジョリオンについての独白を始めます。
存在するけど見えないもの、それはジョジョリオンでは「心の形」。呪いを解くために支払った犠牲と代償はあまりにも大きく残酷だった。傷ついた東方家の人々や東方邸の中に何が見えるのか。それは絶望ではなく希望に見える、と康穂ちゃんは言います。
家族は全員希望のために行動し、その結果、東方家の先祖代々から伝わる呪いは解かれました。呪いを払ったつるぎの輝くほっぺたに、康穂ちゃんは東方家の希望を見るのです。確かにつるぎのほっぺがテカテカに輝いています。千と千尋の神隠しの坊みたいなほっぺです。
「引力、即ち愛!!」ならぬ「希望、即ち頬!!」。今後ジョジョファンはテカテカしたほっぺたを見ると「呪いが解けたようなほっぺですね!」と言うことになるでしょう。
ブルっちまう院長だろう
さきほどの落下物のためか、東方邸に救急車と消防車がやってきます。救急隊に担架に乗せられて搬送される東方常秀(ひがしかたじょうしゅう)。緊急搬送先がTG大学病院だと思うとちょっとシュールです。10日ほど前にも火事で救急車と消防車が来ていたと思うとさらにシュールです。
つるぎは、東方憲助(ひがしかたのりすけ)の包まれた黒いビニールシートをガレージに持ってきます。#095で常敏に首の血管を攻撃され、憲助は意識を失いました。しかし、常敏は手加減したはずだから軽傷だとつるぎは言います。
いや、読み返してみましたが結構なダメージですよ。右手なんてちぎれ飛びそうでしたよ。ジョジョの世界はホントに「死ぬこと以外はかすり傷」ですね。
しかし、憲助の横にある車の下から何やらうごめく人影が。マフラーに黒スーツという、院長としか思えない影が、車体の隙間から憲助へ手を伸ばします。その様子は、まるで排水溝の中からジョージ少年を狙う「IT/イット」のペニー・ワイズのようです。
気配を察知した康穂ちゃんが振り返りますが、院長の姿はありません。しかし、今度は憲助を包む黒いビニールシートの隙間から、院長の手が現れます。驚きを隠せない康穂ちゃん。本体の透龍くんは粉々になって消滅したはずです。
すると今度は憲助の首の血管がグツグツと沸騰しはじめます。苦しそうに吐血する憲助。その口の中には、間違いなく明負院長の指がありました。「どうだいブルっちまう特技だろう」と、ブチャラティが入れたワケではなさそうです。
い…今のは「院長」だったッ!
「院長」の姿は「厄災」のエネルギーであり、『厄災の理』は本体の透龍くんが消滅しても消えることはなかったのです。透龍くんのスタンド「ワンダー・オブ・U」とは、消えることのないこの世の『厄災の理』を利用する能力だったことを康穂ちゃんは理解します。
ここにきて驚きの展開。「透龍くんと院長」の関係は、第6部の「リキエルとロッズ」のような関係だったのです。スタンド「ワンダー・オブ・U」は、「スカイ・ハイ」のような厄災コントローラーだったということです。
透龍くんのスタンド本来のデザインは、きっと両肩のクマちゃんですね。
いや、ちょっと待て。じゃあ「厄災の理」が講演会を開くってどんなシチュエーションだよ。これまでの院長の行動にツッコミを入れたくなってきます。が、最後ですからもう水に流しましょう。
パワー・オブ・ラブ
すまないが…
憲助さんの前から少しばかり移動して
場所を開けてくれないか…?
不滅の厄災に憲助が襲われる窮地のなか、ようやく主人公である東方定助(ひがしかたじょうすけ)が登場。スタープラチナをブチ込む前の承太郎のような口調で、康穂ちゃんに移動をお願いします。
正確にコントロール出来る訳ではないんだ
見えない『回転』だからね…
むしろ存在を知ったばかりの「見えないしゃぼん玉」を使いこなしてるところがすごい。時止めを存在を知ってすぐに使いこなせた承太郎みたいです。ジョースターの一族は物覚えが早いな。
早いといえば、定助の東方邸の到着が早すぎます。もしかしてTG大学病院から東方邸に向かう救急車の後ろについて来たんじゃないでしょうか。靴底の摩擦をゼロにすれば、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」みたいな移動ができるはずです。
スタンド、ソフト&ウェットを発動し、左手で照準を定める定助。このポーズ、フィギア化される気がします。
行くぞ!
「Go★Beyond」
肩から出現した「見えないしゃぼん玉」は、オラオララッシュに導かれるように軌道を変えていきます。そのまま憲助の身体を通過し、厄災の院長を憲助から引きはがします。「ぐえっ」という声を上げながら粉々になる院長。本体の透龍くん共々、ミジメな最期を迎えました。
ラスト6ページで登場し、美味しいところを持っていった定助。ラストのコマは定助と、彼の胸に寄りそう康穂ちゃんのツーショット姿です。塞がっていたはずの定助の左目は、いつの間にか全開。初期のすきっ歯といい、ワンポイントが長続きしない主人公です。
ジョジョリオンは「呪いを解く」物語と同時に、「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語でもありました。最後のコマの定助と康穂ちゃんには、まさしく「パワー・オブ・ラブ」を感じます。って、ムリヤリ上の映画の主題歌に繋げたかっただけですが。
アオリは
砕け散った厄災―!!
透龍くんと院長は消滅し、東方家の呪いもロカカカも無くなりました。ってことは、いよいよジョジョリオンも……終わり?
ウッソ!ホントに終わっちゃうの!?
ジョジョリオン108話のまとめ
ジョジョリオン108話をまとめると、ポイントは以下のとおり。
- 花都はつるぎにロカカカの樹液を飲ませ、透龍と等価交換を試みる
- 等価交換の結果、透龍は砕け散り、つるぎは呪いが解かれる
- 透龍を攻撃した代償として、花都は腹部に致命傷を負い倒れる
- 院長は透龍が死んだ後も消えず、憲助を殺そうとする
- 東方邸に到着した定助が「Go Beyond」で厄災の院長を粉砕する
ついに透龍くんと院長ともに消滅し、完全決着を迎えました。改めてジョジョリオンのラスボス戦を振り返ってみると、メチャやまぴー好みな展開でしたね。
ぶっちゃけ、5部以降のラスボス戦はワールドワイドに意味不明なことが起こりすぎてワケわかりませんでしたから。好き嫌い以前に、理解ができない状況でした。しかし、ジョジョリオンのラスボス戦は展開がわかりやすかったです。
透龍くんへの攻撃も、「東方家の呪い」や「ロカカカ」など、これまでの伏線を利用した見事なトリックでした。やはり荒木漫画の醍醐味はトリックですね。波紋もスタンドもトリックためのツールです。
また、主人公の定助がちゃんとトドメを刺すところも良かったです。最近は主人公が不在で決着つくことが多かったですから。たまにはいいですが、変化球ばかり続くのはちょっと。
ということで、やまぴー的にはジョジョリオンのラスボス戦は大満足でしたね。とはいえ、ここで「ラスボス戦は」と書かざるをえないのがツラいところです。ジョジョリオンって単体のエピソードとして読むとメチャおもしろいんですけどね。
さて、そんなジョジョリオンも、コミックの収録話数を考えると残り2話で終了です。読んでる最中は思うところありましたが、いざ終わるとなるとスッゲエ寂しいです。俺やっぱジョジョ好きなんだな。誰だよ?「そろそろ終わり時だ」とか言ってたヤツは?俺だよ。
ラスボスは倒しましたが、まだ未回収な伏線もありますし、もうちょっと延長とかありませんかね。そんな期待を込めて、次回の展開を考えてみました。
その① 「定助のヤツ、ついに「厄災の理」を倒すまでに成長したか。ならば私の出番だな…」と笑みを浮かべる長髪の男。次号、『記憶の男編』スタート!
その② スタジアムにはまだロカカカが残っている!兄の仇を討つため、ダモカンの弟「アジカン」と夜露の弟「夜遊」のコンビが定助に襲い掛かる!次号『スタジアム探索編』スタート!
その③ 明負院長の死後、巨額の横領やカルテの改ざんが暴露されたTG大学病院。しかし透龍くんによって名義はすべて「広瀬康穂」に書き換えられていました。無実の罪を着せられ刑務所に収監される康穂ちゃん。次号より、あざといほどのコラボ企画『女囚編』がスタートです。
定助も康穂ちゃんを救うため、地元の暴力団「情熱組」の組員に。銃の名手チャカシン・ミスタや義足のクレイジーパピヨン・ポルナレフを仲間につけ、極道の星を目指します。
あっ、そういえばホリーさんの呪いが解かれていませんでしたね。とはいえ、手持ちのロカカカは無くなってます。もう一度ロカカカ探しを始めれば、かなりの長編になるはず。
「ホントに吉良の部屋にはロカカカがあったんだよ!」というカレラの言葉をもとに、再度吉良のマンションを訪れる定助。部屋を調べると、グリーンピースの缶の間から仗世文宛ての手紙を見つけます。そこには「お前にも秘密にしてすまなかった」という書き出しとともに、吉良がロカカカを秘密で栽培していたという告白が。そして「詳しくはコイツに聞いてくれ」と一枚の男性の写真が同封されていました。この写真の男こそ、定助の脳裏に浮かんだ……ってもう十分ですね。
やまぴーの三文創作はさておき、集英社の人はジョジョリオンの未解決な謎を補管するスピンオフを企画してくれませんかね。漫画でも小説でいいです。まだジョジョリオン読んでるヤツはコアな荒木信者だから、きっとスピンオフも買いますよ。新人さんの発表の場にもなるし、けっこうWIN-WINな企画ではないでしょうか。ぜひご検討を。
ジョジョリオン108話のおまけ
ウルジャン目次の荒木先生のコメントは、
最近普通の白い食パンに超うまいヤツがある。並べて食べると以前のに戻れないくらいに。
それは見た目が普通なだけで、超うまい味のセレブ向けの超高級食パンじゃあないでしょうか。どんだけうまいのか気になりますが、「以前のに戻れない」なんて書かれると貧乏人には恐ろしくて手が出せません。下手するとエンゲル係数がハネ上がっちゃいます。
そういえば、やまぴーが子供の頃のジャンプには筋肉ムキムキの男がバトルする漫画がたくさんあったのですが、その中に超おもしろいヤツがありました。それ読んだら戻れなくなって、もう30年以上経ってます。
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