【雑記】スポーツクラブでバイトする文学青年の話

スポーツクラブでバイトする文学青年の話

 

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僕は文学が好きなんです

やまぴーが通ってるスポーツクラブのアルバイトに、文学好きの青年がいます。スポーツクラブをバイト先に選ぶヤツのほとんどは、体育大学の学生かスポーツ好きの脳筋ですから、非常に珍しい存在です。

なぜ彼が文学好きと知ってるのかといえば、初対面のときに彼のほうから「僕は文学が好きなんです!」と話しはじめたからです。文学なんて国語の教科書で習った以外は接点のない人が大半ではないでしょうか。

しかし文学好きの青年は、太宰治とか芥川龍之介とか川端康成とかの作品の魅力について、楽しそうにやまぴーに語ります。大学も体育系ではなく文学部だそうです。

 

最近の若者が文字を読む機会といえば、スマホ画面で活字をスクロールするだけの者がほとんどです。そのスマホでも、9割の時間はパリピダンス動画を見ているだけでしょう。

TikTokに毒された若者が溢れる令和の世の中に、突如として現れた文学青年。彼に対してやまぴーはこう思わざるを得ませんでした。

 

「コイツつまんねえ男だな」

 

だって初対面でいきなり「文学が好き」とか言うヤツですよ? 面白いはずがないでしょ。文学好き? なんだそりゃ? 褒められ待ちかよって感じです。TikTokの流行り動画を教えてくれるほうがマシですよ。

聞いてもないのに文学好きをアピールするとか、わざわざ先生に「花瓶のお水を替えておきました!」とか言い出す学級委員みたいじゃないですか。あるいは聞いてもないのに海外旅行の教訓を語り出す港区女子とか。

 

コイツまさか同世代と話すときもいきなり文学論を展開したりしてないよな。文学の話なんて誰も興味ないんだから。周りドン引きだぞ。太宰だの芥川だの話したいんなら、最低でも『文豪ストレイドッグス』と絡めるとか工夫しなくちゃ。

 

もし彼の文学論の内容が、官能小説寄りだったらやまぴーも一目置いたでしょう。

「やっぱり谷崎潤一郎より団鬼六ですね。『団地妻緊縛地獄』はボロボロになるまで読み返しました」とか、

「フランス書院文庫が好きでキオスクで新しいの見かけたら即買いしてます。おかげで本棚が真っ黒ですよ」

とか語ってくれれば、こちらも退屈せずに聞けるんですが。

 

そもそも文学青年がスポクラでバイトすること自体がボタンの掛け違いなのです。スポクラはパリピ陽キャがバイトする場所なんです。陰キャオタクはブックオフかゲオでバイトしてりゃいいんですよ。

スポーツクラブはスポーツとセックスが大好きな若者がバイトするところなんです。通ってる大学がスーフリ的な事件で新聞沙汰になるヤツがバイトするところなんです。

きっと文学青年もロッカーでバイト仲間から「陰キャがスポクラ来んなし」とか言われてるでしょう。

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僕は空虚なんです

読んでいる本が偏っているのか、文学青年は意外と知らない言葉があるようです。やまぴーが使っている言葉が通じないときもしばしばあります。

知らない言葉があること自体は何の問題もありません。あとで覚えればいいだけの話です。しかし、彼が言った「言葉を知らない自分を表現する言葉」をやまぴーは忘れることができません。

 

「僕は空虚なんです」

 

はぁ?『空虚』ってなんだよ? そこで使う言葉か? 普通に「引き出しが少ない」とか「不勉強」とか言えばいいだろ。お前なにカッコつけて『空虚』とか持ち出して来てんだよ?

 

「お前コトバ知らねえな」って言われたら、「すいやせん、アッシは無学な小男なもんで、テヘペロでヤンス」とか言って頭を掻きながら舌出してりゃいいんですよ。

「おっと旦那、肩に糸クズがついてやすゼ」とか付け足せば、むしろ「コイツ見どころあるな」と評価が上がるところです。

 

そんなフォローもできないくせに、『空虚』などと中二センス丸出しなワードをチョイスするあたりが陰キャなんですよ。休み時間にクラスで騒ぐ一軍男女を横眼に教室の隅で角川スニーカー文庫を読んでる五軍なんですよ。

とキレはしましたが、無意識的に自分を飾ろうとする中二的な挙動、ホントは好きですよ。陰キャの精神構造はそうでなくっちゃ。月刊OUTを読んでた頃のやまぴーにソックリです。

 

ちなみに、このときやまぴーが文学青年に伝わらなかった言葉は『天井のシミを数えている間に終わるよ』です。最近の子は使う機会がないのですかね。新築が増えて綺麗な壁紙の天井ばかりなのでしょうか。

じゃあZ世代に『女房と畳は新しい方がいい』と言っても、「ウチには和室がありません」とか言われちゃうんですかね。令和向けに『女房とスマホは新しい方がいい』とかアップデートが必要でしょうか。閑話休題。

 

そのほか、文学青年に言って伝わらなかった単語には『夜鷹』『蟻の門渡り』『快楽天』などがあります。「文学好き」と自分から豪語しておきながら、不勉強と言わざるを得ません。(『初夜権』と『中折れ』は知ってました。)

40歳を過ぎたやまぴーでさえ日々増えていく言葉を覚えています。今でも『マジックミラー号』とか『スパイダー騎乗位』とか『下着ユニバ』とか言葉を勉強しているのです。若い世代も勉学に励んでほしく思います。

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僕はスランプなんです

文学作品を読んでいる人間は自分でも作品を書いてみたくなるもの。文学青年も自身でnoteを開設して作品をアップしはじめました。

やまぴーもnoteで彼の文章を読もうとサイトにアクセス。しかし、彼はなかなか文章を更新しません。学業とバイトで忙しいのでしょうか。

スポーツクラブで文学青年に会い、noteの更新について聞いてみると、彼は驚くべき回答をしました。

 

「実はいま、スランプなんですよ」

 

はぁ? スランプってなに大御所ぶってんだよ?
お前書き始めたばっかりじゃねえか。

そりゃスランプじゃなくて三日坊主だろうが。お前また自分のこと盛ってんな。その姿勢は好きだけど。アイデアが降って来るの待ってんのか。伊豆か熱海の旅館にカンヅメされねえと書けねえってか。

 

やまぴーがアメブロはじめた最初の一年は、毎日休まず更新したもんですけどね。『俺が若い頃は、週に八日は働いた』ってやつですよ。ペーペーは量と回数こなしてナンボでしょうが。

これが『ゆとり』ってやつですか。運動会のリレーで手を繋いでゴールテープ切る世代ですか。『みんなちがってみんないい』ですか。こちとらロスジェネ世代だこの野郎。くわえタバコの先公に殴られてた世代ナメんなよ。

 

やまぴーがスポーツクラブに行くと、文学青年が新規入会者に初回レクチャーをしている光景を見かけたりします。そんなとき、もし彼が

「何事も継続が大事です!面倒くさくても日々コツコツ続けていきましょう!」

などと笑顔で話しているのかと思うと、血管がキレそうになります。新規会員のそばに駆け寄って、

「コイツ本人は全然やってねえからッ!ハンターの冨樫より遅せえからッ!」

と叫びたくなります。

 

とはいえ、文学青年がジムにいると退屈しないのは確かです。次に会ったときは「パイパン」の語源がわかるか聞いてみようと思います。

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