この記事は書評なんて立派なものじゃありません。
『超一流の雑談力』が好きな人や著者のファンの方には憤慨モノかもしれもません。
それでも、やまぴーは叫ばずにはいられないのです。
『超一流の雑談力』について
まずは簡単に書籍の紹介です。
シリーズ累計で80万部以上売れている、大人気のビジネス本です。
(※2013/02現在Amazonプライム会員ならタダ読み可能です)
本屋はもちろん、やまぴーのウチの近くにあるローソンにも置いてありました。『コンビニに置いてるビジネス本はガチで人気あるヤツ』というのが、やまぴーの人生哲学です。
さらに「超一流の雑談力:超・実践編」とか「超一流の時間力」とか「超一流の強運力」とか「一流の気くばり力」とか似たようなタイトルがたくさん出版されています。しかし『ドジョウを狙いすぎると失敗する』というのが、やまぴーの人生哲学です。
Amazonレビューは、1700以上も評価があり星の平均は3.5。上位の批判的レビューでさえ星が3.0ですから、かなり読者の満足を得ているのでしょう。
やまぴーはコミュ障を直したい
個人的な話ですが、やまぴーはコミュ障です。ブログやインスタでは陽キャな一軍を演じてますが、根はバリバリの陰キャオタクです。相手の目を見て話すことができませんし、そもそも漫画とスポーツクラブの話しかできません。
仕事で客先に行っても、口を開くのは最初の名刺交換のときだけで、その後のトークは営業にまかせっきりです。たまに行く美容室でも「白髪を染めてください」と要件を伝えたら、その後は目を閉じて「話しかけないで」モードに突入です。
そんなコミュ障な人生を続けているやまぴーにとって、会話力のある人は憧れの対象です。誰とでも気軽に話せる人間になれたら、どんなに人生が豊かになることでしょう。
そんなときに出会った本が『超一流の雑談力』でした。80万部も売れてるということは、中身も良いにちがいありません。200ページ足らずの内容を実践するだけで、超一流の雑談力が身につくなんてコスパ良すぎです。
さっそく読み始めてみると「テッパン話は三回練習しろ」とか、「まずは天気とニュースの話をしろ」とか、目から鱗ではありませんが実践できそうなテクニックが紹介されています。
さらに、声の高さについての言及まであります。でも「低い声は良くない」とか書いてるけど、麒麟の川島なんて人気MCじゃないですか。川島よりパー子師匠のほうが雑談力は上ってことですかね。
と、「ふーん」な感じで読み進めていると、衝撃的すぎるフレーズが現れたのです。
『超一流の雑談力』の衝撃的すぎるフレーズ
そこには相手との距離をつめる方法として、以下のフレーズが書かれていました。
『私のメンターになっていただけませんか?』
……えっ?
めっ、メンターぁぁ?
見間違いかと思い、まばたきをしてもう一度ページを見てみましたが、やはりそこには『メンター』の文字が。
いやいやいやいやいやいや!
それは言っちゃダメだろ!
『メンター』って日本語でいえば『師匠』だぞ。しかも「コーチ」みたいな技術面だけの師匠じゃなくて、精神面においても師匠として尊敬してる人に対して使う言葉だぞ。
『メンター』っていわば「人生における師匠」を指す言葉だぞ。
例えるなら、ジョナサンに対してのツェペリさんであり、ルーク・スカイウォーカーに対してのオビ=ワン・ケノービであり、有吉弘行にとっての上島竜兵みたいな存在のことをいうんだぞ。
『メンター』なんて呼べる存在は、人生で一人か二人かだろ。得意先の会社の応接室で何度か会って商談しただけの相手に、ペコペコ頭下げながら使っていい言葉じゃねえぞ。
たいして知りもしない相手を『メンター』とか呼びだすヤツなんて、「馬鹿」か「若造」か「嘘つき」ぐらいだろうが。
やまぴーだったら、外注先の人間に「メンターと呼ばせてください!」なんて言われても全然嬉しくないですけど。むしろ「これくらいで喜ぶ底の浅いバカ」って思われてるのがムカつくんですけど。
ページをめくって『メンター』の文字が出てきたとき、やまぴーは気持ち悪くて「ひゃあっ!」って悲鳴を上げて本を落としそうになりましたよ。例えるなら、他人から借りた本のページの間に陰毛が挟まってたときのような気分です。
雑談ごときでそんな言葉を使うの?
世間じゃ雑談の場で「メンターになってください」とか使われてるんでしょうか。下のような会話が日常的に繰り広げられてるんでしょうか。
「いやあ、部長のお話はいつも素晴らしいです!ウンチクだのガンチクだのが盛りだくさんです!まるでジョブスやベゾスの講演みたいですよ!お仕事の発注だけでもありがたいというのに毎回ご高説まで!」
と、目を輝かせる下請け企業の若手営業マンが最後にトドメに一言、
「私のメンターになっていただけませんか?」
その言葉に同席していた下請け企業の係長があわてて若手を叱ります。
「コラ!お前なんてことを言うんだ!いきなり「メンターにしてください」なんて部長にご迷惑だろ!」
「部長、すみませんね。コイツ世間知らずなもんで」と係長は申し訳なさそうに頭を下げます。
さらに目尻を下げながら下請け係長は笑顔で言葉を続けます。
「部長ぐらいのお人でしたら、すでに御社のなかにお弟子さんがたくさんいらっしゃることでしょう。そこにウチみたいな零歳企業の門外漢が加わろうなんて恐れ多いってモンですよ」
「でも僕はホントに部長をメンターと呼びたいのです!」と応接室の外まで響く声で叫ぶ若手社員。そんな若手の肩をポンポンと叩きながら、係長はしかめっ面をします。
「だから、それがご迷惑なんだよ。だいたいメンターになっていただいたところで、今のお前じゃあ教えの半分も理解できんだろう?まずは発注いただいたお仕事を、ひとつひとつ、丁寧に、心を込めて、やり遂げるのが先だ」
係長は顔の向きを若手社員から得意先の部長に変えると、満面の笑みを浮かべながら「ですよねぇ?」とほほえみ、さらに「今後とも弊社をぜひ……」とテーブルに頭をこすりつけてお辞儀をします。
下請けとの打ち合わせを終えた部長は軽い足どりでオフィスに戻り、
「さっき来た下請けから『私のメンターになっていただけませんか?』って言われちゃってねぇ…」と、周りで仕事をしている部下の手を止めさせ、自慢話を始めるのです。
一方、下請け企業の若手社員は、帰りの電車内で
「ちょっとアレ、やり過ぎじゃないっスか?」と、困惑気味に係長に質問します。
しかし係長は、
「問題ねえって。あそこの部長はココ(人差し指で自分の頭を指しながら)弱いから。今ごろ社内で武勇伝タイムだろう」
と一蹴します。
このようなメンター茶番劇が日本各地で起こっているのでしょうか。日本経済が長い不況から抜け出せないのも当然かもしれません。
ご機嫌取るためなら何言ってもいいのか?
大阪の屋台では呼び込みのときに、男性が通れば「社長!」で、女性が通れば「お嬢さん!」の二種類しか言わないそうです。やまぴーが雑談時に使われる「メンター」に感じる品格は、大阪の屋台となにも変わりません。
『超一流の雑談力』の説明によると「メンター」を使うのは、好意を伝えてくれた相手には好意を返したくなる「返報性の法則」を利用するためだそうです。
いや、だからって「言っていい言葉の限度」があるじゃないですか。ご機嫌取るために「メンター」使っていいなら、もう「喜ばせたモノ勝ち」で何を言ってもいいんじゃないですかね。
「爪のアカをいただけませんか?」
「家に持ち帰って家族で煎じて飲ませていただきます!」
「いただいた名刺を家の神棚に飾ってもよろしいですか?」
「股の下をくぐらせてもらっていいですか?」
「スマホの待ち受けにしてもいいですか?」
「生まれてくる子にお名前の漢字を拝借してもいいですか?」
「もちろん私の戒名にも使わせていただきます!」
「ウチの娘をもらっていただけませんか?」
「二号でかまいませんから!」
相手との距離を縮めるためなら、こういう言葉も使ってOKってことですよね。
というか「返報性の法則を利用」とか言ってる時点で、すでに雑談から外れてると思うんですけど。
やまぴーはコミュ障のままでいい
ってことで、『超一流の雑談力』はとてもやまぴーには合わない本でした。テクニックと称して「メンター呼び」を勧めるような本を半分以上読んだことを後悔してます。
この本を読んで思ったことは「心にもないこと言って雑談力を上げるくらいなら、俺は一生コミュ障でいいわ」ってことです。それはそれで貴重な発見ができたのかもしれません。
そういえば、この本を読んだあとに、ある漫画のセリフを思い出しました。「闇金ウシジマくん」でおなじみの真鍋昌平先生の『スマグラー』という漫画のセリフです。
多額の借金を背負った主人公は返済のため闇バイト始めることになり、バイト初日にリーダーの機嫌をとるためにベラベラと雑談をしゃべり始めます。そのとき、リーダーが主人公を一喝するのです。
「おい、間を埋めるための会話はやめろ」
さらにページを挟んで「クソくれェだ」と。
そうか、やまぴーは雑談そのものが嫌いなんだな。
ビジネス本の内容なんて3日で忘れるんですが、この漫画のセリフは20年以上経っても未だに覚えています。社会の底辺で生きるクズたちの激アツな漫画です。
やまぴーは『超一流の雑談力』より『スマグラー』の内容を語りたいです。