こんにちは、やまぴーです。
今回紹介する映画はこちらです。
12月公開『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』予告編
ユダヤ人300名を動物園の地下に匿い
その命を救った、勇気ある女性の感動の実話。
本当に大切なものを見つめる心、
命の輝きを描いた映画史に刻まれる珠玉の名作が誕生
ダイアン・アッカーマン著作の『ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語』を映画化。
アントニーナ・ジャビンスカの類まれなる動物的な感性、
人も動物も母性で包み込む深い愛情、強い信念に触れた時、
私たちの心は深い感動と余韻に包まれる―。
余談ですが、やまぴーは映画ジャンルのなかでも「ホロコーストもの」がすっごい苦手です。
今回すっごい頑張って観ました。
まずは、あらすじと登場人物紹介、そしてネタバレ感想にプラスして、補足トリビアのオマケつきです。
※今回は、はじめからネタバレおかまいナシです。
知りたくない人は映画鑑賞後にまたお会いしましょう。
あらすじ
「この場所で、すべての命を守りたい」
1939年、ポーランド・ワルシャワ。ヤンとアントニーナ夫妻は、当時ヨーロッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいた。アントニーナの日課は、毎朝、園内を自転車で巡り動物たちに声をかけること。時には動物たちのお産を手伝うほど、献身的な愛を注いでいた。
しかしその年の秋、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。
動物園の存続も危うくなる中、アントニーナはヒトラー直属の動物学者・ヘックから「あなたの動物を一緒に救おう」という言葉と共に、希少動物を預かりたいと申し出を受ける。寄り添うような言葉に心を許したアントニーナだったが、ヤンはその不可解な提案に不信感を募らせていた。
ヤンの予感はまさに的中し、数日後、立場を一転したヘックは「上官の命令だ」という理由をつけて、園内の動物たちを撃ち殺すなど残虐な行為に出る。
一方でユダヤ人の多くは次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)へ連行されていく。その状況を見かねた夫のヤンはアントニーナに「この動物園を隠れ家にする」という驚くべき提案をする。
ヤンの作戦は、動物園をドイツ兵の食料となる豚を飼育する「養豚場」として機能させ、その餌となる生ごみをゲットーからトラックで運ぶ際に、ユダヤ人たちを紛れ込ますというものだった。人も動物も、生きとし生けるものへ深い愛情を注ぐアントニーナはすぐさまその言葉を受け入れた。連れ出された彼らは、動物園の地下の檻に匿われ、温かい食事に癒され、身を隠すことが出来た。しかし、ドイツ兵は園内に常に駐在しているため、いつ命が狙われてもおかしくない。アントニーナの弾くピアノの音色が「隠れて」「静かに」といった合図となり、一瞬たりとも油断は許されなかった。
さらにヤンが地下活動で家を不在にすることが続き、アントニーナの不安は日々大きく募る。それでも、ひとり”隠れ家“を守り抜き、ひるむことなく果敢に立ち向かっていくのだが―。
第二次大戦中にユダヤ人の命を救った人物といえば、『シンドラーのリスト』のオスカー・シンドラーや日本の外交官である杉原千畝の物語は、すでに映画化もされていて有名です。
しかし、ドイツ人のシンドラーや日本の外交官の杉原に対して、『ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語』のジャビンスキ夫妻は、なんの力も持たないポーランド人です。
ポーランド人だけはユダヤ人を支援したことがばれると、本人だけでなくその一家全員が処刑されるという、非常に危険な立場であったことが、前の2作品とは大きく異なるところですね。
なお、後年ジャビンスキ夫妻は、イスラエル政府からヤド・バシェム賞(諸国民の中の正義の人賞)に選ばれています。
登場人物
アントニーナ・ジャビンスキ – ジェシカ・チャステイン
夫のヤンとワルシャワ動物園を営む動物を愛する女性。戦争が勃発しナチスに占拠された動物園の中で、ユダヤ人を匿うため奮闘する。
『女神の見えざる手』ではキッツい役だったのに、今回は傷つきながらも自分の信念を貫く慈愛の女性。この女優さんすごいですね。おっぱいも出してます。
演じるのは、『ゼロ・ダーク・サーティ』『オデッセイ』『女神の見えざる手』のジェシカ・チャステイン。
ルッツ・ヘック – ダニエル・ブリュール
ヒトラー直属の動物学者でジャビンスキ夫妻の友人。ワルシャワ動物園で絶滅種「オーロックス」の繁殖を試みる。アントニーナに恋心を抱いており、戦争の激化とともに彼女への態度も変わっていく。
気持ち悪いうえにヘタレというナイスな悪役でした。この人もナイス俳優です。
演じるのは、『イングロリアス・バスターズ』のダニエル・ブリュール。
ヤン・ジャビンスキ – ヨハン・ヘルデンベルグ
アントニーナの夫。動物園とゲットーを行き来して、多くのユダヤ人を動物園に匿う。
演じるのは、『オーバー・ザ・ブルースカイ』のヨハン・ヘルデンベルグ。
イジェク – マイケル・マケルハットン
動物園の飼育員であり、ジャビンスキ夫妻の親友。
演じるのは、『ゲーム・オブ・スローンズ』のマイケル・マケルハットン。
登場人物が少ないながらも(少ないから?)各キャラが立ってて良かったです。
補足トリビア
やまぴーは昔から歴史が苦手なため、今回の映画を観ても意味がよくわからないところがいろいろありました。
自分用に調べたことを備忘録として書いておきますので、よかったら参考までに。
知ってる人はスルーしてね。
ボーランドについて
中世以来、多くのユダヤ人が住んでる西をドイツ、東をロシアに挟まれた情勢不安な国。1939年9月1日にドイツ軍に侵攻され、これがきっかけで第二次世界大戦が勃発する。第二次大戦中はソ連とドイツに分割占領され、大戦での犠牲者は総人口の5分の1。これは犠牲者の比率として世界で最悪の比率である。
『シンドラーのリスト』『戦場のピアニスト』も舞台はポーランド。
ゲットーについて
ナチスがユダヤ人を強制的に住まわせた居住地区および強制収容所。ポーランドに設置されたワルシャワ・ゲットーは、38万の住人を抱えるナチス占領下のヨーロッパで最大規模のもの。
中世ヨーロッパの時代からゲットー自体は存在したが、ドイツに占領されるまでポーランドにはゲットーはなかった。1942年、ナチスは列車でユダヤ人をゲットーから絶滅収容所(処刑施設)への移送をはじめる。
ユダヤの感謝祭
聖書に3大祭り(3大巡礼祭とも呼ばれる)として記されているお祭り。春の過越し祭(ペサハ)、夏の七週の祭り(シャブオット)、秋の仮庵の祭り(スコット)。映画に登場した祭りは「春の過越し祭(ペサハ)」で、家族が食卓につき、マッツァー等の儀式的なメニューの食事をとって祝う。「春分の日の後の最初の満月の日」に祝われ、年によって日付が変わる移動祝日。
なお、アドルフ・ヒトラーの生年月日は1889年4月20日。
オーロックスについて
家畜牛の祖先。野生種としては1627年に世界で最後の1頭がポーランドで死んで絶滅。1920年代に、ドイツのヘク兄弟によってオーロックスを蘇らせる試みが行われた。
ネタバレ感想
この映画をひとことでまとめるなら、
動物たちとダイジェスト感のおかげでホロコーストものとしてはマイルドに鑑賞できる、でもちょっとマイルドすぎるかも
評価:★★☆☆☆
微妙にひとことにまとまってない気もしますが、そんな感じです。
虐殺シーンがほとんどなく、そこはホロコーストものが苦手なやまぴーとしてはありがたかったです。でも、ちょっとストーリーまとめすぎてるところがあったのは残念。
そして、邦題のセンスのなさはちょっとどころじゃなく残念。『刑事ジョー ママにお手上げ』ぐらいお手上げです。
ぜんぶ動物さんのおかげ
まずはアントニーナが自転車でワルシャワ動物園内を駆け抜けるシーンからスタート。
園内の動物にあいさつをしていくアントニーナ。お客さんで賑わう園内。アントニーナの自転車と並んで駆けてく陽気なラクダさん。今日もいい天気。
これからこの動物園が大変なことになるんだよなと思うと、映像がさわやかなほど早くも気分が沈んできます。
でも動物っていいね。見るだけで癒されるわ。やっぱり赤ん坊と動物は最強です。ってことは動物の赤ちゃんは無敵か。ひさしぶりに動物園でも行くか。最後に行ったのどんだけ前だ?
とか思っているうちに物語は進み、ドイツ軍が侵攻してきます。爆撃で死んでいく動物たち。ひでえな。けっこうエグい殺され方していきます。
でも、この映画ではユダヤ人の隠喩として動物たちが殺されていくため、実際に人間が殺されるシーンはほとんどありません。
そう考えると、動物さんには申し訳ないですが感謝しないとですね。あれが人間だったら観てられなかったと思います。戦闘シーンは平気ですが虐殺シーンはマジで苦手です。ありがとう動物さん。
でもドイツ兵がスクリーンの隅っこで、ちぎれたシマウマの足を片付けてるシーンはちょっとキツかったな。あと、瓦礫と化した街をカンガルーが駆けるシーンはシュール過ぎました。
物語はその後も重い展開が続きますが、スクリーンに生き残ったうさぎの赤ちゃんが登場するたびにちょっと癒されて、やっぱ動物の赤ちゃんは偉大だな、と痛感しました。
ありがとう、動物さん。
メインの描写はけっこうあっさり
その後、ジャビンスキ夫妻は動物のいなくなった園内の施設を利用して、養豚場を作ることを提案します。ナチスの軍人ヘックは、絶滅種「オーロック」の繁殖を手伝うことを条件に養豚場を作ることを承諾。
ヤンはユダヤ人収容所のゲットーからブタのエサになる生ゴミを回収するかたわら、生ゴミの山にユダヤ人を隠してゲットーから助け出し、アントニーナが動物園の地下室で匿いはじめます。
ユダヤ人を匿っていることがナチスに知れれば、ユダヤ人もジャビンスキ夫妻も処刑される非常に危険な行動です。ナチスがやってくる警戒の合図として、アントニーナがピアノでオッフェンバックのオペレッタの抜粋曲を演奏します。
『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』緊迫の本編映像
ただ、思っていたより匿っている描写はアッサリしてました。
「ユダヤ人300名の命を救った」とよく目にしましたが、映画の中で匿っていた人数はせいぜい10数人程度。このあたりはもう少し時間をかけて描写しても良かったかも。
匿っている間にピンチが訪れるシーンもあまりなし。
一度、ヘックが屋敷にいるときに、地下から子供の笑い声が聞こえたため、アントニーナがあわてて色仕掛けでヘックの気を逸らす、というシーンがあったくらいです。
むしろヘックとアントニーナの昼ドラのようなネチネチしたシーンの方が多かったような。アメリカバイソンの種付けを手伝うアントニーナに発情するヘックとかナイスキモ演技。
そして現場を目撃して怒り出す夫のヤン。「俺が死にそうな目に合ってるのに男といちゃつきやがって」みたいなことを言い出して、ちっちぇえなオイって感じです。
「外の世界では人が簡単に殺されてる」とか言うんならヘックの発情くらい大目に見てやれよ、と。あんたもゲットーで暴行される少女見たじゃねえか、と。
いやあ、あの暴行シーンは嫌だったなあ。シーンそのものはなかったけど、破れた服とか足から流れる血とかで十分トラウマです。やっぱホロコーストものは嫌いです。
そのあとも、ナチスがユダヤ人を(殺すために)列車に乗せるシーンがあるんですが、列車に乗れない小さい子をヤンが抱き上げて列車に乗せてやるシーンがもう嫌で嫌で。何も知らずに持ち上げてもらうためにバンザイしてる小さい子たちが嫌で嫌で。一番最後の子がすげえちっちゃい子でだったりで、もうホント嫌。やっぱホロコーストもの無理だわ。
で、ヘックのせいで険悪になってたヤンとアントニーナは、その晩むしろ激しく愛し合ったりして。うわ、ヘックって夫婦の夜のスパイスに使われただけじゃん。
ってこんな映画観ても下品なこと考えてゴメンなさい。
ラストの描写もけっこうあっさり
時代は流れ終戦間際、ついにジャビンスキ夫妻の動物園での活動が明るみに。ヘックが外出した夫妻の息子リシュの後をつけ、ユダヤ人のためにパスポートを偽造していたパン屋を発見します。
それにしてもリシュよ、お前太ったな。戦時中なのに二重アゴじゃないか。子役の選定を間違えた?
それはいいんですが、この物語では動物園の秘密が暴かれる前に、夫のヤンがすでに銃を持ってナチスとドンパチやってたりします。しかも撃たれてナチスに捕虜として捕まってたりするので、なんか動物園の秘密がいまさらになってるような気が。
しかもアントニーナから、夫は間違えて捕虜にされただけだから助けてほしいと頼まれるヘック。チャンスとばかりアントニーナに迫るも「最低」と言われおめおめと引き下がるヘック。もはや同情すら覚えそうです。
その後、動物園の地下でユダヤ人たちが書いた壁のラクガキを見つけ、すべてを悟るヘック。いやいや、壁のラクガキ消しとこうよ。細心の注意払ってユダヤ人匿ってたんですよね?
壁のラクガキ見つけるほうがドラマ的に盛り上がるのはわかるんですが、同時にそんなユルいチェックで300人もユダヤ人を逃がせたのか?と思ってしまいます。やまぴーの性根が歪んでるのかしら。
最後は、秘密を全部知ったうえでも誰も殺さず動物園を後にするヘック。ある意味ヘタレキャラを貫ぬいてます。ていうか平時ならコイツかなりいいヤツのはずです。
そして戦争終結後は、仲間たちと動物園を再開。生まれたばかりの娘を預けた動物園から逃げ出した仲間たちとは、終戦後けっこうアッサリ会えたみたい。仲間探しドラマがあると思ったのに。
そして夫のヤンも終戦後に動物園に戻ってきてアッサリ再会。夫探しのドラマがあると思ったのに。
と、けっこうアサッリ物事が進み(一応は)ハッピーエンドとなります。
まとめ
ホロコーストものにしては、全体的に悲惨なシーンも少なくアッサリしてるので、やまぴーのようなホロコースト嫌いでも見やすい映画です。
ただ、アッサリしすぎというか、ストーリーがダイジェストに進んでいく感じがしたのがちょっと残念です。
もう少し、掘り下げる部分は掘り下げたても良かったかな。
予告編を観て、「こんな映画かな」と予想したものを超えるような展開もなかったのもちょっと残念。予想を超えてたのは、ヘックのキャラぐらいかな。彼はよかったです。
いや、アントニーナもヤンもよかったんですけどね。息子は後半太ってたからダメだけど。
なお、ワルシャワ動物園は実際にいまでもポーランドで営業してるそうです。観終わったあとは、ぜったい動物園行きたくなりますよ。
『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』
The Zookeeper’s Wifeジェシカ・チャステイン – アントニーナ・ジャビンスキ
ヨハン・ヘルデンベルグ – ヤン・ジャビンスキ
ダニエル・ブリュール – ルッツ・ヘック
イド・ゴールドバーグ – マウリツィ・フランケル
シーラ・ハース – ウルスラ
エフラット・ドール – マグダ・グロス
ヴァル・マロルク – リシャルト・ジャビンスキ監督 ニキ・カーロ
脚本 アンジェラ・ワークマン
原作 ダイアン・アッカーマン『ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語』(亜紀書房)
製作 ジェフ・アッバリー、ダイアン・ミラー・レヴィン、ジェイミー・パトリコフ、ジュリア・ブラックマン、キム・ズビック
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影 アンドリー・パレーク
編集 デヴィッド・コウルソン
製作会社 ション・フィルムズ、トリン・プロダクションズ、エレクトリック・シティ・エンターテインメント、ロウ/ミラー・プロダクションズ
配給 フォーカス・フィーチャーズ、ユニバーサル・ピクチャーズ、ファントム・フィルム